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千春は何も言わなかった。
「悲しいけど高平という男が羨ましかった。」
「高平とSEXするお前を見て、
何度もオナニーしたよ。恥ずかしいけどな?
今度高平に会ったらそう伝えてくれ。」
私は精一杯こみ上げる涙をこらえた。
最後に言わなければならない事があった。



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「別れよう千春」
千春が下を向いたまま激しく頭を横に振った。
「俺はこの結論を出すまで、本当に悩んだよ。
死ぬほど悩んでも答えが出ないくらい千春が好きだ。」
涙声になってしまった。
「私は・・」
「何も言うな」
何か言おうとした千春を制した。
いい訳は聞きたくなかった。
千春のいい訳を聞いたら、
又元に戻ってしまいそうだった。
「私は別れたくない・・別れない・・別れない・・・」
私は何も言わなかった。
千春はまるで念仏でも唱えるように
その言葉を繰り返していた。
「送っていくよ千春。荷物は後で送る。」
しばらく千春はその場を動かなかった。
私も何も言わなかった。
そして再び私が千春に話しかけようとした時、
今度は千春がそれを制した。
「いい。1人で帰れる・・」
千春は周りに散乱した磁気テープをかき集めると、
自分のバッグへしまい込んだ。
千春が玄関へ向かった。
私は振り向かなかった。



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やがてドアノブの乾いた金属音が部屋中に響いた。
「良ちゃんが好き。死ぬほど好き。」
千春はそう言葉を残し、部屋を後にした。
千春から”好き”という言葉を聞いたのは
交際してから初めてだった。
そして皮肉にもこれが千春の最後の言葉だった
千春との”別れ”を選んだ私の判断は間違っていなかった
それなのに・・・
その日玄関のドアを開けると、
そこに大きな荷物を抱えた千春が立っていた。
胸が締め付けられた。理解出来なかった。
なぜ千春がここにいるのだ。
「良ちゃ・・」
「何でここが解った!?」
「良ちゃんのお父さんに聞きました・・・」
実家には新しい住所は
誰にも教えるなと言っておいた筈だ。
「突然押しかけてごめんさい。でもこうするしか・・」
「何しに来た?」
千春がうつむいた。
そして何か思いついたかのように、
その場にしゃがみ込み、
ボストンバックの中から何かを取り出した。
「これ・・あの次の日良ちゃん誕生日だったでしょ?
あの時渡しそびれちゃったから・・・」
千春と別れた翌日は、確かに私の誕生日だった。
「こんな事の為にわざわざここまで来たのか?」
酷く残酷な事を言ってるのは解っていた。



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再び千春がうつむいた。
「入れよ」
中に入ると千春はその場に座りながら
部屋の周りを見回していた。
この部屋には千春との思い出の品は何も置いてない。
写真はもちろん、千春のコップや、千春の歯ブラシ。
千春に選んでもらったクッションも、上京した当時に実家から持ってきた
センスの無い座布団に変わっていた。
あれから間もなく千春は
以前勤めていた会社を辞めたという。
高平との事はこの時あえて聞かなかった。
「良ちゃんは元気だった?」
「ああ。新しい彼女が出来た。」
千春に嘘をついた。
「そう・・・どんな人?」
「そうだな・・・千春とは違うタイプだな。
でも好きなんだ。だから・・解るよな?」
これで千春が帰ってくれると思った。
しかし、千春の返答は私にとって予想外だった。
「私は2番でもいい・・2番目でいいから・・」
「お前とは別れただろう?
もうそういう事言うな。」
「私は別れるなんて言ってない。
別れるって言ったのは良ちゃんだけ。」
「黙れ」
「でも一緒に居れるなら2番でいい・・だから・・」
「俺はそういう付き合い方はできない。
俺はお前と違う。」
「私は良ちゃんの事一度だって
2番だなんて思ったこと無い!!」
「ふざけるなっ!!!」
珍しく大声を上げた。
千春が驚いてとっさに目をつぶった。
「高平とはどうなった?」
自分でも一番思い出したくない名前を口にした。
しかし、一番気になる事だった。
「その名前は言わないで・・」
「会っているのか?」
「会ってない!あれから一度も会ってないよ!信じて!」
「別れたと言う意味か?
まあ今となっちゃあどうでもいいよ。」
千春がうつむいた。傷ついてる筈だ。
しかし早くこの部屋から出て行ってもらいたかった。
そうしないと千春を押し倒してしまいそうだった。
そして以前の自分に戻ってしまいそうだった。
追い討ちをかけるように私はさらに千春を傷つける。
自分でも信じられない程、残酷な言葉を投げつけた。



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「千春・・・」
千春が顔を上げる。
「高平の前でした事を俺の目の前でもやって見ろ。」
千春が驚いた顔をした。そしてすぐにうつむいた。
「俺の前では出来ないか千春?やっぱり俺じゃ駄目か?」
千春はしばらくうつむいたままだった。
ひざの上でこぶしを握り締めていた。
その拳の上に涙が落ちていた。
千春が涙を拭いた。
そして千春はゆっくりとブラウスのボタンを外していった
千春が下着姿になった。
こうして見ると随分と痩せたようだ。
千春は下着姿のまましばらくうつむいたままだった。
「良ちゃん・・・」
「何だ?」
「・・・ビデオ・・見た時どう思った・・?」
「前にも言っただろう。」
「軽蔑した・・?」
「当たり前だろう!」
しばらくして千春が顔を上げた。
千春はその大きな瞳にいっぱいの涙を浮かべ、
私を見つめていた。
そしてふいに強がりのような笑顔を見せた。
「良ちゃんの目の前で(ビデオと)同じ事したらうれしい?」
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そして千春とほぼ同時に私も絶頂に達した。

気がつくと涙が頬を伝っていた。
解っていたことだが、やはり辛かった。
ビデオの中はまさに”知らない世界”だった。
信じられない光景を目の当りにし、しばらく放心していた。
ビデオの中の千春は私の全く知らない千春だった。
まるで多重人格者のようだ。
しかし明らかに千春は高平とのSEXを楽しんでいた。
そしてなにより私と一緒にいる時より輝いて見えた。
ビデオの中の千春は高平の上に跨っていた。
そして自分の手でそれ挿入しはじめた。
高平が起き上がりそのまま座位の体制になる。
ベッドが激しく揺れる。
そして千春と高平は舌を絡ませあっていった。


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私はビデオを停止した。
目の前で繰り広げられる映像を
これ以上見るのが耐えられなかった。
週末再び千春はやってくる。いつも変わらぬ千春がやってくる。
自分で選んだ道だ。私は全てを見る事を選んだ。
全てを見た。そして確信した。
千春との”別れ”を決意した。
金曜日、いつものように千春が泊まりに来た。
私の家には千春の私服がいくつも置いてある。
だから週末は会社帰りにそのまま私の自宅へ直行するが通例だ。
その日の夜、私は千春を抱くことはしなかった。
口には出さなかったが、千春が求めてきたのが解った。
私は欲情を抑え、千春に背を向け目を閉じた。
悲しいかな今の私は狸寝入りするのが精一杯の抵抗だった。
私の知る千春はここでさらに求めてくるような女ではない。
それはビデオの中のもう一人の千春だ。


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次の日、つかのまの休日を千春と二人で過ごした。
千春にとってはいつもの休日。
そして私にとっては千春との最後の休日だった。
映画を見た、ショッピングした、
試着して千春が一番似合った服をプレゼントした。
いつもよりちょっと高めのディナーをした。
その後普段行かないようなバーに入った。
いつも並んで歩く駅からの帰り道。
この日二人は手をつないで自宅まで歩いた。
自宅に着いてまもなく千春が浴室へ向かった。
私は少し飲みすぎたようだ。
千春が入っている浴室のドア越しに私は立っていた。
「良ちゃんそこにいるの?」
「ああ。一緒に入っていいか?」
私は普段こんな事は言わないし、
二人で風呂に入った事などない。
「酔っ払ってるの?もうすぐ出るから待ってよ。」
私は既に裸だった。
そして強引に狭いユニットバスの中へ入っていった。
「ちょ、ちょっと良ちゃん!何してんのよ!」
「いいだろ別に?」
「んもう・・しょうがないなあ・・
でも私もう出るからね。」
「もう少しいいだろ」
私は千春を強引に抱き寄せた。
強引に舌を絡ませた。
胸から陰部へと指を這わせる。
千春のそれはおびただしい量の愛液で包まれていた。
シャワーの水とは明らかに違うそれは、
ビデオの中の千春を想像させた。



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「すごい濡れてるね。」
「アホ!」
千春にげんこつされた。
いつもの千春に戻ったのを見てなぜか高平に嫉妬した。
「じゃあ私先にでるね」
「先に出て待ってるって言う意味か?」
「アホ!!」
半ば照れ隠しに千春は浴室から出て行った。
それにしても普段無口な私が、この日はよく喋った。
そうさせたのは言うまでもなく酒と、そして
今もビデオデッキに入ったままのあのビデオテープだった。


浴室を出ると部屋は真っ暗だった。
ベッドの上が膨らんでいる。千春が布団の中にいる。
明らかに私を誘っている。千春から私を誘っているのだ。
こんな千春は初めてだった。
布団に入ると千春は下着姿だった。
「なんか今日のお前変だよ?」
「変なのは良ちゃんでしょ!!」
「どうせなら全部脱いでおけばいいのに」
「私にはこれが限界です」
また高平に嫉妬した。
私にとっての千春の限界線は所詮下着姿なのだ。
私は頭に血が上り、強引に下着を剥ぎ取った。


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私は千春と口を重ねる事もなく
布団の下へと潜っていった。
千春の足を広げ局部に顔をうずめる。
「良ちゃ・・・」
千春がなにやら話そうとしたが、
すぐにそれは息遣いに変わっていった。
いつもと違う事に千春は感じている筈だ。
そしてこの日千春はそれを受け入れた。
いや、千春のそこから溢れ出す愛液を見る限り
むしろこれを望んでいるかのように感じられた。
布団を剥ぎ取り千春の顔を覗き込む。
「気持ちよかった?」
「布団かけてよ」
「だから気持ちよかった?」
「ねえ・・どうして今日はそういう事言うの?」
「たまにはいいじゃん。それよりすげー濡れてるよ。」
「ねえやめてよ・・
そういう事言うの。早く布団かけて。」
「いいじゃねーか別に。ほらこれ見ろよ。」
愛液を手につけ千春に見せつける。
それを見て千春が顔をそむける。


「なあ裏ビデオ見る?」
「良ちゃん?いい加減にしないと怒るよ。」
「なんでいいだろ?ビデオ見ながらやろうぜ。
きっともっと濡れるよ。」
千春が私を睨んだ。
千春の大きな瞳で睨まれ、私は思わず視線をそらした。
このビデオを見せたら千春はどういう行動を取るだろう
どれほど傷つくだろう。
千春との”別れ”が目前に迫っていた。
このビデオを再生すれば全てが終わる。
「よし!見ようぜ!」
私は起き上がりテレビをつけた。
すぐにビデオの画面に切り替えた。
そしてビデオのリモコンに手をかけた時、
千春が大声を上げた。



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「私帰る!!」
千春は立ち上がり服を着はじめた。
千春は私に背を向けたままそれ以上何も言わなかった。
こうなることは初めから予想できた。
言うまでも無く千春はビデオの中身を知らない。
このままではただの喧嘩別れになってしまう。
真実を知らせないまま別れる訳にはいかない。
私はこみ上げる涙をこらえ、静かに再生ボタンを押した
再生音の後すぐに画面から女の声が聴こえてきた。
「馬鹿みたい!私帰るから!今日の良ちゃん変だよ」
着替え終わった千春が私の方を振り向かずそう言った。
しかしテレビの中の千春は止まらない。

(あぁぁ・・高平さんも・・・
早く・・早くして?・・ぁあ・・)
玄関へ歩き出そうとした千春の動きが止まった。
目の前にある窓ガラスが
現実の千春のその姿を映し出していた。
「ど・・・どうして!?」
千春の声は悲鳴に近かった。
「それはこっちが聞きたいよ・・・」
私は不思議と冷静だった。
「見ろよ千春。お前ってこんな事する女だったんだな・・最低だよお前は。」
テレビの中の千春が私の名を叫び絶頂を迎える時だった
私はテレビのボリュームを上げた。


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私は千春が一番傷つくであろう言葉を選んだ。
そして一番傷つくであろう行動を選んだ。
そうする事で自分自身にけじめをつけたかった。
「やめてよっ!!!」
千春が私からリモコンを取り上げた。
映像は再び黒い画面に切り替わった。
画面の右上には”ビデオ1”の文字だけが
怪しく映し出されていた。
千春がビデオデッキからビデオテープを取り出した。
テープの中から磁気テープを引き出し始めた。
泣きながらそれが無くなるまで千春は続けた。
私はその全てを見届けた。
不思議と酔いが覚めていた。
いや、始めから酔った振りをしていたのかもしれない。
磁気テープの山に埋もれ、
まるでへたり込むように
座って泣いている千春に話しかけた。
「俺の知らない千春がいっぱいいたよ。
そのタイトル通り”知らない世界”がそこにあった。」
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これは男からのメッセージだ。
今回のカセットテープには、
これに登場してくる”千春”なる人物が
私の名前を口にしている。
こうした証拠がありながら、
それでも私は認めたくなかった。
それほどまでにテープの中の千春は、
私の知っている千春とは程遠い存在だったのだ。
どうしても同一人物と思えない。
千春と重ねることができない。
「ビデオ」
では実際に映像で見たらどうなるのだろう。
千春に対する意識が変わるだろうか?
変わってしまうだろう。
恐らく私は千春を許さないだろう。
でも今現時点なら許せる。
自分でもまだ認めたくないからだ。
だからこそ「ビデオ」が届く前に
千春に知らせなければならない。
そして私はそれを見てはいけない。


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再び携帯電話の画面に目を移す。
アドレス帳の一番上にある千春の名前・・・
千春の携帯電話のアドレス帳・・
一番上は誰の名前だろう。
千春にとっての一番は誰なんだろう。
変わりたくは無い。千春を失いたくない。
目を閉じ千春を想い浮かべた。
そして・・・私は発信ボタンの2個隣にある
”OFF”ボタンを押した。


その日は平日にも関わらず私は自宅にいた。
先週の日曜日出社したための代休日だ。
私はどこにも出かける気になれず、
自宅で読書にふけっていた。
ふと窓の外から、聴きなれた声が聴こえて来た。
千春の声だ。
私のアパートの斜め向かいに住んでる
年配の女性と会話しているようだ。
私はここに住んで早4年目を迎えるが、
ほとんど会話した事がない。
無論挨拶程度はするが、
この女性の睨み付けるような目がどうも好きでなかった
その点千春は誰とでも仲良くなれる。
千春のそういう所が好きだった。


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(あれ今日は仕事お休み?)
(ううん、さぼり。ロクなもの食べてないと思うから何か作ってやろうかと思って。)
私の事だ。
千春とその女性はしばらく立ち話をしていた。
(・・千春ちゃん、男はあまり信じちゃだめよ・・
もし別れたら言って頂戴・・うちの息子紹介してあげる。
いい男よ~・・まだ独身なのよ。)
大きなお世話である。
千春に内緒話をしているようだが、全部聴こえている。
年寄りの内緒話は声が大きいので
あまり内緒にならないのが特徴だ。
(あはは、ありがとう。
まあ、ふられたらお願いします。)
しばらくして玄関のチャイムが鳴った。
千春がスーパーの買い物袋を下げていた。
スーツ姿のままだった。
「急にどうしたんだ?つうか全部聴こえてるぞ。」
「だと思った。お年寄りは耳が遠いでしょ?
だから自分の声も大きくなっちゃうの。
あれ何?やきもち焼いてるの?かわいいねえ。」
「あほか。お前こそなんだ?
俺に会いたくなったんだろ?」
「いや営業の途中で気分が悪くなって・・
まあいいや。さぼった。」
相変わらずの会話だった。
「たまには何か作ってあげる。つうか肉じゃがだけど。」
「なんで肉じゃがなの?」
「男は愛する人に”肉じゃが”
作ってもらうと嬉しいんでしょ?」
「まあ何でもうれしいよ。ところで作れるん?」
「当ったり前でしょー?まあ座って待っとけ!」
肉じゃがの材料と一緒に、
料理の本まで買ってくる所が千春らしい。


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私はベッドの上に腰掛け、台所に立つ千春を見ていた。
千春は時々隠れてレシピを見ているようだ。
ふと私は千春を試して見たくなった。
「千春。SEXしよう。」
千春が一瞬驚いたような表情をした。
私は普段こんな事は口にしない。
千春がどういう反応をするか見てみたかった。
「アホ!真昼間から何言ってんの? 
すぐ出来るから茶でもすすっとけ!」
そういって千春はペットボトルの緑茶を投げてよこした
やはりいつもの千春だ。私の知っている千春だ。
千春は肉じゃがが出来ると器に盛り、
先ほどの年配の女性の自宅へ届けに行った。
あの女性は夫に先立たれ今は一人暮らしの筈だ。
そういう事を知って千春は行動している。


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夜になり、千春を抱いた。いつもと同じ様に抱いた。
いつもと同じ様に恥じらいをみせる。
いつもと変わらぬ千春がそこにいた。
ビデオが届いたのはそれから2週間後の事だった。
前回のより一回り大きい茶封筒。
もう中身は見なくても解った。
部屋に戻り、ビデオテープを取り出した。
タイトルにはこう書かれていた。
「あなたの知らない世界」
意味は考えるまでもない、千春の事である。
私の知らない千春がこのテープに収まっている。
カセットテープの時とは比較にならない程、
鼓動が高まっている。
ビデオテープを持つ手が震える。
私はこれからこれを見る。
そしてある決断を下す事になるだろう。
言うまでも無く千春との”別れ”だ。
そう考えると涙がこぼれた。
テープを握り締めしばらく泣いた。
・・そして想いを断ち切るかのように、
ビデオデッキに挿入した。


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テレビの電源をつけ、ビデオの画面に切り替える
そしてまもなく黒い画面が切り替わった。
女性の局部が画面いっぱいに映し出された。
そして・・
悲しい事にそれは見覚えのある形だった。
画面の横から見知らぬ男の顔が入って来た。
男はそのまま局部に顔をうずめていった。
執拗に舐めまわす男の舌、
濡れているのが唾液だけで無い事がわかる局部。
女は突然痙攣するように反応している。
そして悲しんでいるように喘ぐ女の声が聴こえる。


男は舐めるのを中断し、
ビデオカメラに手をのばしてきた。
カメラが固定から男の手に替わった。
画面が揺れる。
先ほどまで舐めまわしていた局部にカメラを近づける。
濡れて嫌らしく光るそれは、
恥ずかしげもなく画面いっぱいに映し出されていた。
カメラはそのまま上に移動する。
見覚えのある陰毛、見覚えのある胸。
そして見覚えのある顔・・
恥ずかしそうに笑って顔そむけるが間違いなく千春だった
「千春ちゃん恥ずかしいですかあ?」
男が千春に向かって話しかける。
「恥ずかしいですう・・」
笑って千春が答える。
その笑顔は悲しくなるほど綺麗だった。


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「高平さん、本当に誰にも見せないでね・・」
「ええーどうしよう・・彼氏に見せてあげたいなあ・・」
「だめだめだめ!ほんとにやめて?
ね?高平さんのオナニー用!」
「わかったわかった。
でもさ彼氏の前でもこういう姿みせてあげなよ。
可愛そうだよ。」
「良ちゃんは高平さんとは違うの!もうカメラ止めてよ~」
男は相変わらず私を挑発する。
この男は高平という名前のようだ。
千春との会話でも聞いたことの無い名前だった
惨めさと興奮が入り混じる。
私は高平の挑発に見事にのっている。


高平はそれを一番見たい筈であろう、
高平と千春のSEXを見ながら
私がマスターベーションをする姿をだ。
その暗示に掛かるようにわたしはズボンを脱ぎ始めた
・・そしてそれを予想してたかのように、
高平は千春にも同じ事を要求した。
「千春ちゃん。オナニーしてよ、これで。」
高平の手には小型のローターが握られていた。
高平は私に見せるかのように画面のまえで揺らしてみせた。
無論私はこのような類を
千春とのSEXで使用したことなどない。
そういうSEXを一番嫌がるのは千春だと思っていたからだ。
「えぇ~・・・カメラの前では恥ずかしいなあ・・」
千春が発した言葉からは、
既に経験があると言う事が推測できる。
千春が男の前でそんな事をするのであろうか?


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「いいじゃん。俺もこれ見てオナニーするんだからさ。お互い様。」
「ええ・・じゃあ高平さんもそこでして!ね?して?」
千春の甘えた声が許せなかった。
しかし心のどこかで
千春のそんな姿を見てみたい気がしていた・・・
「わかった。するからさ。早くしてよ。」
千春はベッドの上で壁にもたれかかる様に座った。
そしてカメラの前で再び足を広げていった。
千春が自らの手でローターを局部に当てた。
そして自らの手でそのスイッチを入れた。
その瞬間小さな機械音が聞こえて来た。
千春は苦悶に似た表情に変化した。
カメラはその全てをレンズに収めていた。
「あぁぁ・・高平さんも・・・
早く・・早くして?・・ぁあ・・」
「わかった。イク時は言ってね。
すごい興奮するね。かわいいよ千春ちゃん。」
高平の息遣いが聴こえてきた。画面が揺れ始めた。


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千春の声がだんだんと大きくなってゆく。
千春が腰を上下しはじめる、
こんな姿を見るのも初めてだった。
「あ・・いくぅ・・いきそう・・」
「ほら良ちゃんは?
いつもみたいに謝りながらイって。」
「アァァァァァ・・!りょーちゃん!
ごめんねりょーちゃん!アァァイクゥゥゥ!!」
カメラの前で千春が絶頂を迎えた。
ひとつ解ったことがある。
千春は私とのSEXで絶頂を迎えたことはない。
悲しいかなそれを画面を通じて理解した。
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