[処女喪失] もう自分は処女を喪ったのだと実感し、猛烈な後悔が沸き上がりました①
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私はそのとき二十歳。○○大学に通う二年生でした。
その日は当時入っていたバドミントンサークルで
コンパがありました。カラオケボックスの一室で
コンパは宴たけなわ。
私もそんな談笑の輪の中に交じっていました。
「どうだ、宮原。佐伯さんとは順調なのか」
隣に座る一つ年上の多田さんが話しかけてきました。
彼は同じサークルの先輩です。
四角い、面長の顔だち。背が高く、広がった鼻は……
言っては悪いかも知れませんが、どこか豚を連想しました。
「ええ、まあ」
私は我知らず、頬を赤くしました。
佐伯さんは二つ年上の先輩です。
今年の春先にサークルで知り合い、彼から告白されて、
付き合うようになりました。
私にとっては高校時代以来、二年ぶりにできた彼氏です。
交際は順調でした。ただ最近はデート
のたびに体を求められるのが悩みでした。
私はまだ、どうしてもそこまでは踏み切れないんです。
今時の女子大生にしては珍しいかも知れませんが、
実は私──宮原有希子(ゆきこ)はまだ処女なんです。
高校のときにクラスメートの男の子とお付き合いして、
キスや軽いペッティングまでは経験しましたが、
最後の一線だけは許しませんでした。
古風な考えかもしれませんが、結婚前に処女を失うことへの
抵抗感があったからです。
それに初体験への不安や破瓜の苦痛に対する恐怖もありました
ただ、だからといってセックスに
興味がないわけではありません。
性への好奇心は人並みか、もしかしたら人一倍あると思います。
いずれは佐伯さんとそういう関係になってもいいかな……
そんなふうにも考えていました。
「でも、気をつけろよ。
あの人、あっちこっちに彼女がいるって噂だからな」
にやり、と笑う多田さんに、私は表情をこわばらせました。
「えっ……浮気してるってことですか?」
大音響のカラオケが鳴り響いて、
周囲はおおいに盛り上がっています。
楽しい雰囲気の中で私はひとり大きなショックを受けていました。
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「あ、冗談だよ、冗談」
すまなさそうに謝る多田さんの言葉にも私はうなだれるだけです。
裏切られたショックで目の前が真っ暗になっていました。
「きっと宮原が本命だ。自信持てよ」
多田さんが慣れ慣れしく私の肩を抱いてきます。
「佐伯さんとはエッチとかしまくってるんだろ。
ラブラブじゃないのか?」
「私たち……その……まだ」
「あれ? まだエッチしてないの?
……もしかして宮原って、処女?」
多田さんは爛々と眼を輝かせて、私の顔を見つめました。
男性経験がないことをあっさりと見破られ、
恥ずかしさを感じながら、私はこくん、とうなずきました。
「ふーん、いまどきの女の子にしては珍しいな。
このサークルのメンバーはほとんどエッチ体験済みと思うけど
……興味はないのか?」
「興味って……?」
「セックス」
と、多田さんが真顔で言います。
あまりにもストレートな表現に私は言葉を失いました。
まったく興味がないといえばウソになります。
──えっ、ユキちゃんって『まだ』なの? ──
驚いたような友人の言葉がふと耳元でよみがえりました。
周囲の友人にも初体験を済ませた人はたくさんいます。
もしかしたらいまだに処女なのは私だけかもしれません。
本音を言うと、焦る気持ちもあるんです。
「実は俺も、しばらく前に彼女に浮気されたんだよ」
「多田さんも……」
そう言われると妙な親近感が沸いてきます。
「どうだ、二人でお互いの恋人に復讐しないか?」
「復讐?」
「一次会が終わったら、ふたりでホテルに行こう。
裏切った罰として他の男を相手に処女を捨てるんだ」
多田さんが耳元でささやきました。
肉厚の唇がかすかに耳たぶに触れています。
(処女を捨てる……? 多田さんを相手に……?)
私の全身に電流のような衝撃が走りました。
酔っているせいか、ストレートに口説かれているせいか
分かりませんが……異様なほど体の芯が熱いんです。
じわり、と下腹部が濡れていることに気づき、私は赤面しました。
多田さんが勢い込んだように体をすり寄せてきました。
太い指先が私の太ももを撫でます。ぞくり、と鳥肌が立ちました。
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「セックスなんて大したことじゃないって。
みんなヤッてることさ。だから、な? な? しようぜ、宮原」
多田さんはしつように誘ってきます。
私は言葉を失いました。こんなに露骨な誘いは、
普段なら即座に断っていたでしょう。
だけど今日は──
「裏切られたのに、笑って許す気か?
裏切った相手には罰が必要だろ」
罰──
心が、激しく揺れているのが自分で分かります。たしかに、
自分を裏切った佐伯さんを罰してやりたい気持ちが先立っていました。
「頼むよ、俺も気持ちがモヤモヤしててさ。
こんなこと宮原にしか頼めないんだ。ちょっとだけだから。
俺、痛くしないし」
「え、でも……」
「大学生にもなって、いつまでも処女じゃ恥ずかしいだろ。
な? 裏切った彼氏の代わりに俺が教えてやるから」
「でも……」
「どうせ、佐伯さんも今頃別の女とよろしくやってるって」
「…………!」
突然、佐伯さんのことが遠い存在に感じられました。
三ヶ月間付き合った彼氏なのに。なんだか、
見ず知らずの他人の話のように──
(悪いのは、佐伯さんのほうよ。先に裏切ったのは向こうだもの。
そのせいで、私は好きでも何でもない男に
……処女を奪われるんだから)
言い訳するように、心の中でぶつぶつと呟いてみます。
セックスなんて大したことじゃない。
そんな背伸びをしてみたくもなりました。女
子大生にもなっていまだに処女だという焦りもありました。
多田さんが返事を待つように、私の顔をのぞきこみます。
私は言葉を失いました。
(これは佐伯さんへの罰……罰なのよ……)
自分への免罪符のように、
心の中で、同じ言葉を呪文のようにつぶやいていました。
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